二次試験はほぼ原作どおりに進んだ。
 ブラハさんの試験合格者は七十名。
 ここで分かったことだけど、ゴンの番号もずれていない。
 合格者人数もずれる様子がないので、今の私はその他大勢の受験者と同じ扱いらしい。
 メンチさんのスシ課題は全員不合格。
 それをネテロ会長の進言によって、課題変更。合格者は四十二名。
 蜘蛛鷲の卵はおいしかった。




 そして現在、三次試験会場に向かう飛行船の中にいる。

 クラピカとレオリオはすでに寝てしまっている。
 ゴンとキルアは飛行船探検。

 体力的にはまだまだ余裕のある私はひとり廊下で、夜景の写生に勤しんでいた。
 主に描くのは月明かりに照らし出された雲海。
 流れる雲の一瞬を捉えながら鉛筆を動かす。

 静かな廊下にゴンとキルア、それにネテロ会長が現われた。

「あ!さん!」
でいいよ、ゴン」
「うん。
「こんなところでなにしてんのさ」
「絵を描いてたんだよ」

 私の絵をゴンとキルアがのぞいてくる。
 別に隠すようなものでもないし、これは具現化したものじゃない、普通のスケッチブック。
 見せてところで問題にはならない。
 何より絵っていうのは見せてなんぼ。

「わぁ~凄い!って絵が上手なんだ!」
「上手とかいうレベルかよ!
 これもプロ級じゃん!」
「ありがとう、二人とも。
 憶えてるかな? ヌメ―レ湿原で二人の絵を描かせてっていったの?」
「あ、あれね。憶えてる、憶えてる」
「う~ん…?」
「描かせてもらえるかな?」

 絵描きとしては、是非とも描きたい素材だ。

に描いてもらえるの!?」
「あんたなら、描いてもいいぜ」
「ゴンがよければなんだけどね
 …頼んでいる身としては、『光栄です』と返せばいいかな?キルア」
「お、お願いします!」
「わかってるじゃん」
「ゴンからもOKもらったし、遠慮なく描かせてもらうよ」


 久々にいい絵が描けそうだ。
 顔が緩む。

「あ、そうだ!もネテロさんのゲーム参加しない?」
「ゲーム?」
「なに、簡単なゲームじゃよ。ワシからボールを取る。それだけじゃ。
 なんだったら、お前さんにもハンターの資格をやるぞ?どうじゃ?」

 どこから見ても念が使えるから誘っているように見える。
 ネテロ会長からボールを取る。
 それって絶対に無理だよねぇ…それこそ、卑怯な手を尽くせば別だけど…
 そこまでしてネテロ会長からハンター資格を貰うなら、普通に試験を受けた方が楽。
 よし、見学をさせてもらう。

「う~ん…私的には、それでハンター資格を貰うって言うのはちょっと、困るかな…
 参加じゃなくて、見学は?」
「まぁ、いいじゃろ」
さんも参加すれば、いいのに…」
「そうだぜー」
「どうせなら、格好いい君たちを描きたいからね。
 見学しながら君たちを描かせてもらうよ。…ふふふ、がんばってね」

 これもいたって本音だ。
 動いている君たちを描くという魅力はゲームよりも勝る。
 ついでにネテロ会長も入れてあげよう。

 原作よりもやや気合の入った二人の動きをデッサンしていく。
 位置関係などで、ネテロ会長を入れていくと良くわかる。
 右手と左足はまったくといっていいほど使っていない。
 ふむ。
 やらないで正解だね。

 キルアがギブアップ宣言をして部屋を出て行く。
 ほんのりと殺気をかもし出している。
 あれに気付かない受験生って鈍いよねぇ…

 残ったゴンを観察する。
 ボールを真っ直ぐ見据える。
 純粋なまでなその瞳。

 いつか君が映し出す私は、どんな私だろうね。

 最後の最後までボールは取れなかったが、健闘賞は確実に貰えると思う。

「どうじゃ?やっぱり、やる気はおきんかの?」
「はい、おきません」
「まったく、きっぱり断りよって」


 ネテロ会長がゴンのために飛行船の到着時刻を遅らせる連絡を入れる。
 私もそれに便乗して短い睡眠をとることにした。

見ないで。そんなに真っ直ぐ