トリックタワー頂上。
 ここはトンパに任すとしよう。

 さて、私は早々にここをクリアしようかな。
 さりげなく離れた私は、こっそりとからくり扉をくぐった。

 降りた先は誰もいない。
 状況と説明文からいっても、ここは一人でクリアできるらしい。
 誰かと協力だと、念も隠さないといけないから面倒だったけど、一人なら問題ない。
 遠慮せずに進むとしよう。

 道はすべてトラップ。
 発動しても念でガードすればどうってことないものばかりなので、そのまま直進。
 途中、雇われ試験官…つまり囚人たちとの戦いがあった。

「ルールは簡単。死んだ方が負けだ。分かりやすいだろ?」
「そうだね」
「余裕だな」
「事実だから」

 囚人の数は全部で七人。
 一対一で時間を稼がれるのも面倒だからね。
 いっぺんに相手をしてもらうことにした。
 向こうにとっても願ったり叶ったりだったらしくて、嬉々としてリングに上がる。

 所要時間五分。

 思ったより時間がかかってしまった。
 七人中三人が念能力者。

 普通の受験生なら、合格なんて無理だったんじゃないのかな?

 私の戦い方は手を使わない。
 手は絵を描く為の大切なものだ。
 いちいち、雑魚相手に大切な手を使ってやることはない。
 戦いで手を使用するのは念を使うときだけ。
 それも能力使用時限定。
 ここではそれを使うことはまずないと思う。

 三人いた念能力者も全員、上半身と下半身の真っ二つにしてあげた。

 暗がりのせいか、あまり綺麗な赤じゃなかったのが残念。

 ゴールしてからは、試験開始前と同じ状態で寝るのに徹した。
 終了一分前の放送で覚醒する。
 もうすぐご到着のはず。

 程よくぼろぼろになったゴンたちを迎える。
 毎回ギリギリでご苦労様。

  *    第四次試験 ゼビル島。

 タワー脱出は十番目。
 ターゲットは『80番』
 …『0』という数字にでも好かれているのかな?
 タワーの方で番号は確認済み。
 女のスナイパー。

 問題があるとすれば、彼女のターゲットが『301番』…ゾル家長男に殺されたはず…。
 殺される前にプレートを取ってしまえば問題は万事解決。
 彼女より先のスタートをいいことに、彼女を待ち伏せ、速攻でプレートを奪った。

 彼女をやるのはゾル家長男の仕事。
 これで、私は残りの日数を優雅に過ごせるってわけ。

 これだけの自然だから、写生にはもってこい。
 あんまり目立つところにいて、ピエロには見つかりたくない。
 どこかいいところはないかなぁ…。
 …その前にクラピカにでも会っておこう…あれ以来まともに会話を交わした記憶がない…
 ピエロを避けること優先にしてしまった結果だ…

 手ごろな木を見つけて上からクラピカを探す。
 出来れば、レオリオと会う前に見つけたい。
 何度か手ごろな木を見つけは上から探すを繰り返して、やっとクラピカを見つけた。
 試験内容もあるから、ここは、偶然を装った方がいいかな?

 クラピカの進行方向に先回りをして、到着まで写生をして待った。

「…?」
「あぁ、クラピカ。どうも」
「どうもって…君は…ターゲットはいいのか?」
「もう、盗ったからね」
「……はぁ…」
「…もしかして、疑った?」
「あぁ…」

 態々偶然を装う必要はなかったか…とにかく話せればそれでいいんだよ。うん。

 重苦しい溜め息をつくクラピカに改めて顔を上げる。

「クラピカのターゲット誰?」
「…トンパだ」
「新人潰しだね…今のところ見かけていないから、役は立てないね…ごめん」
「いや、が私の敵じゃないと分かっただけで十分だ」
「…そっか」

 敵じゃないか…。
 今は、そうだね。
 でもね、貴方が復讐を決意している限りは、私は敵になる。

 私は貴方のことを嫌いなわけじゃない。
 仲間を第一と考えているところは同じだからね。

 そういう意味では同類。
 だから、出来る限りは…まるく治めたい。

 互いに言いよどんでいたのもつかの間、クラピカが重い口を開いた。

「……第一次試験で話していたことを憶えているだろうか?…」
「『 貴方は優しすぎる。復讐には向いていないよ』で、あってる?」

 遠まわしなことはしない。
 これは、対極に位置する思いのぶつかり合い。

「あぁ…私は、君が思っているほど優しい存在ではない。
 何に代えても、やり遂げなければならないんだ
 私にとって…が仲間の為に強くなるのと同じことなんだ…」
「…私がクラピカを知ったのはこの試験からだけどね。
 クラピカの本質は優しさだよ
 類は友を呼ぶ。
 ゴン、キルア、レオリオ…貴方の周りに集まった人たちは優しいでしょ?
 それは貴方が優しいからだよ」

 貴方は殺した仲間を埋葬してはいられないほどに…

「違う!私は!」
「…冷酷?非道?…どれもクラピカには似合わないよ
 未だに人も殺したことないでしょ?」
「…っ…君は…」
「あるよ。
 それにトリックタワーでも七人やってる」

 クラピカが息を呑むが分かる。
 揺れる瞳が悲しみの色を表す。
 ほら、貴方は優しい…

 意見を押し付けても意味はないからね
 ここまで、かな。
 最後に釘をさしておこう。

「それでも…クラピカ自身が『優しくない』っていうなら、それでもいいよ
 ただ…今後、『復讐』と『仲間』…『友人』でもいい…
 どちらかを選ばないといけないときがくるよ。
 その時、一度でも『仲間』『友人』を取った瞬間、貴方は『復讐者』の資格をなくす
 それだけは覚えておいてね…」
「……」

 沈黙するクラピカをその場に置いていった。
 周りには監視員しかいないから、大丈夫なはず。

 貴方が最後に下した決断を私は知っている。
 それが、貴方の本当の思いでしょ…。

 私の仲間を傷つけないで。


生かされるべき想い