ここはやっぱり、銀髪少年のキルアに便乗しよう。

 走りながら違和感がないようさりげなく主人公たちに近づいておく。
 ビスケの修行に比べれば、これくらいどうってことない。

 予定通り、私が主人公たちに近づいてから幾ばくもなく、スケボーの音が近づいてきた。

「おいガキ汚ねーぞ!そりゃ反則じゃねーかオイ!!」
「何で?」

 私の横を素通りしたキルアに医者志望のリオリオ…だったかな?彼が声を上げた。
 確かこれでも十代だったはず…
 う~ん…見えない。

 彼を観察している間に主人公たちもその話題に移ったらしく驚愕の声を出す。

「オッサ…これでもお前らと同じ十代なんだぞオレはよ!!」
「「ウソォ!?」」
「あ―――!!お前らまで…!!ひっでー!もォ絶交な!!」

 ふふふ。
 面白いなぁ

 騒いでいる主人公たちから離れてきた彼が、丁度私の斜め前に来た。
 このチャンスを逃すほど馬鹿じゃない。
 スピードをほんの少しだけ上げて隣に並ぶ。

 少し笑いを含んだ声で話しかけた。

「楽しそうなお仲間だね」
「ぇ…あぁ…だが、騒々しいともいうな」
「それぐらいの方が試験も退屈せずにすむよ。私はでいいよ」
「私はクラピカと言う。よろしく頼む…そういえるは凄いな」
「こちらこそ、よろしく。クラピカ…でいいかな?」
「あぁ」

 話しかけられたことに驚いてはいたが、すんなり声を返してくれた。
 別に彼…クラピカをやるつもりはない。
 下手にやって今後が変わってしまっては、困る。

 あれを止めれるくらいの存在にはならなくてはいけない。
 最低限、意見ができる程度の存在に慣れればいい。
 出来るだけ多くの布石を残す。


 余計な会話をして体力を奪うのも悪いような気がしたので、それ以上の会話はせず、黙ってクラピカの隣を走った。
 五・六時間走ったところで、後ろから凄い勢いで追い上げてきた人物がクラピカのちょい前を走行する。
 後ろから見える顔も凄い形相だ。

 前の方の気配が変わった。
 騒がしくなっている。

 そういえば階段があったな。

 階段を上り始めてから、やや前方の彼にクラピカが声をかける。

「レオリオ、大丈夫か!?」
「……」
「おう!見てのとーりだぜ!
 なりふりかまわなきゃまだまだいけることがわかったからな!
 フリチンになっても走るのさー!
 クラピカ!!他人のふりするなら今のうちだぜ!」

 リオリオじゃなくて、レオリオか。
 レオリオ。
 よし、覚えた。

 クラピカに合わせて走っているうちにレオリオとも一緒に走る形になる。
 不思議そうに見てくるレオリオの視線とかち合う。

「あー、あんたは?俺はレオリオだ」
でいいよ。よろしく」
「おう、こっちもレオリオで構わないぜ。よろしくな」

 挨拶を終えてそのまま走っていると私が待っていた会話が始まった。
 大人しく二人の会話を聞いていれば、自動的に私に話が振られてくる。
 その目論見どおり、クラピカが私にその話を振ってきてくれた。

 ねぇ、クラピカ…貴方はどう思う?
 貴方が捕らえるといっている彼らは、私にとって何よりも大切な人たちなんだよ

 それを知ったら、貴方はどうする?
 怒る?
 悲しむ?

は…どうしてハンターになろうと?」
「……昔、ちょっと事故で記憶をなくして…それから十年、保護されて育ったんだ。
 その間ずっと、曖昧な記憶を抱えていた。別に嫌な記憶ってわけじゃない…
 大切な仲間だといってくれる優しくて、強い人たちの記憶。
 それが五年前、運良く思い出せた」

 話しながらも彼らの顔がのぞく。

「へぇ、よかったじゃねぇ!」
「私も同感だ…本当によかった。
 なら、はその仲間を見つける為にハンターに?」
「うん…ありがとう、レオリオ。クラピカ。
 …違うよ。見つける為じゃない。
 私はずっと足手まといだった…記憶をなくした事故もその為に起きた…
 だから…私は強くならなきゃいけないんだよ」

 もう、絶対に足手まといにはなりたくない。

「あの人たちは強い…今はもっと強くなっているはずだから…
 せめて、自分の身ぐらい守れるくらい強くなってからじゃないと会えない
 もう一度、会うために…それがハンター試験受験の理由…
 二人みたいな立派な理由じゃないよ」

 それにもう一つ。
 彼らに言いたい。
 たった一言。

「そんなことはない!」
「そうだぜ!立派ないい理由だぜ!」

 即答で返してくれる二人に目を細める。
 いつか貴方たちは私の敵になる。
 それでも今は、貴方たちの言葉が嬉しい。

 その気持ちは偽りじゃない。


「ねぇ…クラピカ…」
「何か?」
「…気分を害するとは思うけど…これだけは言っておくね。
 貴方は優しすぎる。
 復讐には向いていないよ…」


「…見えたぞ!出口だっ!」

 誰かが叫んだ。
 前を向けば、遥か前方と思える場所に光が見える。

 完全に話が折られてしまった。
 これ以上言うこともなかったし、丁度いい。
 レオリオは見るからにヘトヘトだが、宣言通り、なりふり構わず再び走るのに専念し出す。
 顔を顰めていたクラピカも私がそれ以上はなす気がないと態度で示すとレオリオと同じように走ることに専念する。
 かくいう私も走ることに集中した。


無色の中に存在する色の名は