鮮紅色(せんこうしょく)。


 鮮やかな紅色が辺りを染めた。


 茜色よりも明るく、紅色よりも鮮やかで、真紅よりも艶やかな色だと思う。
 顔についた赤を拭って観察していると、直にくすんでくる。
 一番近い色なら臙脂といったところ。


「……あんた、何したんだわさ…」
「何って、殺しただけだけだよ?
 前にビスケが言っていたように、何回か警告したんだけど…しつこくてさ…」
「……殺すのは初めだわよね?」
「うん。初めてだよ」

 あそこじゃ、死体なんて当たり前。
 殺す殺されるも日常。
 殺される前に殺せは合言葉。

 あの家族がくれた温かいものは、あそこじゃ手に入らないものだった。
 それでも、死はいつかは訪れるものだというのは変わらない。

 なら、戸惑うことはない。
 死は誰もが辿り着く最終地点。
 それが、早いか遅いかの差。

「躊躇わないんだわね…」
「躊躇う必要はないよ…ビスケ…躊躇ったら終わりだよ」

 困惑するビスケに私は微笑む。


あの過去が現在に繋がっているとしたら