止血を済ませた少年の横に座る。

 再び緩やかに時間が流れ始める。

 何もすることなく、ただそこにいた。
 それだけで、時間は過ぎる。

 時間の感覚など私はない。
 考えたこともない。

 ただそこにいるだけで、時間は過ぎる。
 とても不思議でならない。

 太陽が真上から少し傾いた頃、少年の瞼が震えた。
 開いた少年の瞳は黒かった。

「……っ」

 私を視界に入れたとたんに少年は跳ね起きた。
 もちろんその後は、痛みに呻く。

「…傷が、ある」

 声を始めて出した。
 『彼女』と同じ声。

 腹部を指差す私を少年は睨む。
 少年の瞳に私が映った。

 そう、『私』が映っていた。
 色のない私が。

 瞳に映りこむ『私』を 覗き込んだ。

 無骨な声に少年の瞳が揺らいだ。
 飽きることなく、『私』を見ていた私は顔を上げた。

 男が二人。
 こちらに歩いてくる。

 私は立ち上がって、無造作に男たちに近づいた。

 近づく私に男たちが殺気を放つ。

 心地よい。
 自然と口元がつり上がる。


 私は狂気。


 目の前にいるのは獲物。
 喰らいつくべき場所は知っている。

 さぁ、食事を始めよう。
   

虚ろな瞳が目を覚ます