初めて呼吸をした。
 清々しいというには程遠いけれど、確かに私が呼吸をした。

 ゴミばかりの景色が広がる。
 今の私には相応しいところかもしれない。
 捨てられた感情(わたし)。

 ちらつく髪は白。
 『彼女』は黒だった。
 やはり、捨てられた私にはお似合いの色だ。


 風に運ばれ、血の匂いがした。
 まだ、新しい。


 血の匂いを頼りに歩き出した。
 ここに来て初めてゴミ以外のものを見つけた。

 黒髪の少年。
 腹部は赤く染まっている。

 近寄ってみれば、浅く息をしている。
 まだ、生きている。

 ―――生きている?

 『まだ、死んでいない』ではなくて。
 『まだ、生きている』。

 何故、そう思ったのだろう…

 『生きている』と『死んでいない』とでは意味が十も二十も違うのに。

 緩やかに少年と私の時間が進む。
 手をゆっくりと少年に伸ばした。

 私が『生きている』と思った存在。
 なら、助けるのもいいかもしれない。

刻み始めた白