ボンゴレ十代目の当りを付けて日本に渡った。
 情報が少ない中、彼と会ったことがあるというランキング小僧…フゥ太という子供を見つけて、聞き出そうとしましたが、沈黙の掟を律儀に守り通してお手上げです。
 能力も失われてしまって使い物になりませんしね。
 手間のかかる子です。
 仕方なしに、子供が作った過去のランキングで彼らと関係しそうなものを見つけ、おびき出すことにしました。
 まずは、下地作り。
 手近な中学、黒曜中に帰国子女として転入といきますか。

 制服も気に入りましたしね。





 転入初日は大人しく、情報収集に励もうかと思えば、その情報収集相手がいなかった。

 隣の席と言うのはかっこうの情報収集役だというのに。
 契約して、知っている限りの情報を引き出そうと思ったのですが、仕方ありませんね。
 他の方にあたりましょう。


 隣が不良なら、別の利用方がありますしね。


 そう、思っていたのですが、当てが外れました。
 昼休み。
 彼は堂々と登校して来ました。

 一緒に転入生を演じる部下の千種と犬がいるため、周りの人は多い。
 入口付近で会話してから、僕の隣に座る。
 これで彼が僕の隣の人だと確定した。

 周りの様に積極的な態度は見せないものの、聞き耳は立てている。

 軽く彼を観察する。
 黒髪黒目。日本人には在りがちな色。髪型は全体的に少し長めのショート。
 四角い千種が掛けているのと良く似ている形の眼鏡を鼻の頭に引っ掛けている。
 右目を閉じていること以外は、特に変わったところがない。

 僕が観察が終わる頃になると周りの人だかりが彼も一緒に囲っている。
 少し鬱陶しげにしている彼に多少共感を抱く。

 上辺だけの挨拶を交し、彼、と言葉遊びに興じる。
 途中、犬が口を挟むのを止める。どこか納得した表情する
 僕と犬達との関係に気付いたと言ったところでしょう。
 クフフ…別の意味で予想外ですね。

 周りのギャラリーがについては諦めろと喋り出す。様々な理由を勝手に話されているにも関わらず、はなんのリアクションも起こさない。


 ただ、話を聞いていると奇妙なことに気付く。
 特徴を語られているのにも係わらず、何故か人物像が捉えずらい。どっちつかずなものばかり。
 ここまで徹底的になっているとなると故意にやっていると考えた方が良さそうですね。
 本当に予想外で…嬉しい誤算でしょうか。
 下手な連中よりも使えそうです。

 残り少なかった休み時間はとの言葉遊びに費やした。
 それに対して妙な引っ掛かりを覚える。
 会話の仕方。
 僕に対しての視線。
 仕草。
 本当に些細な、ふとした拍子に妙な感覚になる。
 こんなことは初めてですね。

 くだらない、生ぬるい授業が開始されるととの会話が途絶える。
 その間、幾度となくに視線を向ける。
 妙な感覚の答えが知りたい。

 が帰り支度を始める直前、ある答えに辿り着いた。

 ……と会った事がある?
 そう、僕はと会った事がある。

 すんなりとその答えが僕の中に入ってくる。

 いったいどこで?

 僕の視線との視線が交差する。
 率直に会ったことがないかと問えば、不思議な答えを返された。

 まるで、思い出すも、思い出さないも僕の好きにしろと言っているようで…

 …まぁ、いいでしょう…
 今は目の前にあるボンゴレの方が重要です。
 彼が何者であろうと、利用できるようなら、利用するまでです。

疼く記憶は曖昧で、出せない答えに、口を閉じる。