手伝う…ねぇ…手伝う…
 口先だけって、感じじゃないし…考える余地はあるか?

 う~ん…どうすっかなぁ…

 仮に人攫いだったとしても、俺一人で十分こと足りるっちゃぁ足りるけど…子供達の『精神面』を考えるなら、人が多いほうが、いいか。
 空振りなら、それで終わりだし。

「ぇっと…じゃぁ、お言葉に甘えてお願いしてもいいっすか?」
「ほぉ、素直じゃねぇか。…断るかと思ったぜ?」
「子供達のことを考えると人が多いほうがいいっすからね」

 俺一人で行けば、自然と戦い方も限定されて、一対多数用の戦法になっちまう。
 そうなると、箍(たが)が外れて、少々…てか、大分、子供達の精神上よくない状態なっちまうからなぁ…トラウマまっしぐらコースって具合に。

 人数がいりゃ、格闘とか、ナイフとか、相手から武器奪って戦えばいいし。
 あくまでも、相手が人攫いだったらの話だけど。

「で、目星はついているのか?」
「んー…はじめは、子供達と俺しか知らない秘密の遊び場に行ってみようっと思っているッす」
「それって秘密基地?」

 ワクワクと白熊が話しに入ってきた。

「そこまでは行かないっすよ。小さな手作りのブランコとか、小さな横穴とか?
 あと、木登りしやすい木があったりって感じっすよ」
「へぇ…ブランコ、俺も乗れる?」
「……う~ん…ちょっと無理そう?」

 体格的にブランコに座れないと思う。ちなみに立って乗るのも無理だな…頭がブランコを括りつけている木に当たると思う。
 うな垂れる白熊を横に置いておいて、一つだけ、気になったことを質問する。

「一つ、聞いてもいいっすか?」
「なんだ?」
「どうして、手伝ってくれるんっすか?」
「……ただの気まぐれだ」
「…そうっすか。じゃ、その気まぐれに感謝っすね」

 唯のふざけた野郎ってわけじゃ、なさそうだな…この隈男。
 結構、食わせもんだな。

 気まぐれって言っている割に、…気まぐれって…目じゃない。

 海賊の気まぐれっていうのは、何度か見たことある。
 それも本物の海賊達のをだ。

 そして、本気の目は何度も見たことある。


 だから、隈男の目が本気だってことはわかる。


 …なんで火がついたかは知らないけど、まぁ、使えればいいか。

「それじゃ、本格的に暗くなる前に探しに行っちゃいましょう」
 森の一角に出来た、小さな広場。

 子供達が持ち寄った玩具も俺と子供達が力を合わせて作ったブランコも、よく木登りの競争をしていた木も…すべてめちゃくちゃになっていた。

 踏み潰された玩具。


 紐を切られ、斜めに傾いたブランコ。


 無残に枝を折られた木が無言で佇む。


 ……幸い、血の跡は、ないな…臭いもしない。
 それにしても、大掛かりな『狩』だ。

 子供達の人数は二十人はいたはずだ。それらを一人も逃さずに狩るってなれば…
 最低三十人以上…四十人ってところかぁ?
 子供はすばしっこいからなぁ…

 万全を期すなら、それっくらい、いてもおかしくはない。
 地面に残った足跡も、たくさん入り乱れてるし、可能性としちゃ、高い。

「くっくっく…見事に、居ないな」
「…そう…っすね」
「どうするんだ?」

 喉元を震わせて、意地らしく聞いてくる隈男。
 決まりきっていることを聞かれるのは…少々、困る。
 万が一の時に、その為に、手伝ってもらっているんだ。

「そんなの決まってるっすよ」
「…ほぉ…」

 ニヤニヤと笑う隈男に俺もにっこり笑って答えた。





「迎えに行くんっすよ」




『退屈』をゴミ箱に殴り捨て、『刺激』に手を出す。