いつも誰かの後をついて歩く。
皆は自分より大きくて、気がつけば小走りになってる。
自分は直ぐに転んでしまう。
誰かがそれに気付くと皆が自分のところに集まってくれる。
優しく、強い手に抱き上げられる。
まただ。
また、足手まといだ。
涙目になると必ず、頭を撫でてくれる人がいる。
そして、同じことをいう。
「大丈夫だ。置いて行かない。お前は大事な仲間だ」
視界が白くなる。
「……朝…?」
目を開けば、自分の部屋。
窓からはやっと日が昇ったらしく、白い朝日が差し込む。
机に突っ伏して寝ていた体は何処かしらが痛い。
「……」
描かないと。
描かなきゃいけない。
唐突に湧き上がる思い。
その思いにつき動かされるまま、目の前に広げられたスケッチブックに筆を走らせた。
私は拾われた。
拾われる前の記憶は薄らぼやけている。
忘れているわけじゃない。
はっきりしないだけ。
絵を描くことが好き。
保護された時も、ボロボロのスケッチブックと短い鉛筆を持っていた。
今も、好き。
だから、美術の強い学校を選んで通わせて貰っている。
今の家族も好き。
私に優しくしてくれる。
朧気な記憶にいる皆は、もっと好き。
そういえば、不思議なことがある。
ハンターハンターの漫画を読んでいると、ちょと気になる。
朧気な記憶に引っ掛かる。
そんな感じ。
一心不乱に私はスケッチブックに筆を走らせ続ける。
今、描きあげないと後悔すると心が叫ぶ。
日が昇り、家族が起き出す気配が家に広がる頃、絵が出来た。
そっと筆を置く。
起きてから3時間あまり、突き動かされるままに描いた絵はどこか懐かしく、笑みがこぼれた。
家の中が騒がしくなってきた。
もうそろそろ、部屋を出ないと母が起しにくる。
絵から視線を外すのがもったいないような気がしたがそうもいかない。
しぶしぶ、顔を上げた私の目に飛び込んできたのは、見知らぬ街だった。
「あれ…ここ、どこ?…」