魂は巡る



 何度でも



 何度でも…



 終りなき輪


 六度目。
 彼を見た回数だ。

 こんなところを六度も…。
 俄然、興味が湧いた。

 本来なら門番の俺が接触することは違反だろうが、ここを六度ともなれば、多少の接触は許されるだろう。
 俺と同じものを抱えることになる魂。

 ましてや、あんなボロボロの子供を放って置けるか――…

 門の内側から戻って来たかの子供の魂にそっと触れた。

 夢なんてものを見た。

 いったいつ以来だ?

 彼の地から戻る僅かな時間。
 たったそれだけが夢を見る時間。
 やたらに鮮明で、濃い夢。
 それもその筈だ。
 あれは記憶だ。
 俺の、門番としての記憶。


 魂は巡る。

 循環の輪。
 輪廻。

 魂は六道のいずれかを通り、転生、生まれ変わる。


 その輪の入口を守る者。
 六道輪廻の門番。
 冥界の門番。
 それが俺の仕事。


 あんな記憶、夢を見るなんて、なんかあるか…?

 せめて、日常だけは平穏であって欲しい。
 何せ普段は善良な中学生なんだから、さ。

 徐に時計に視線を向ける。
 『八時五十分』

 …………はちじごじゅっぷん。

 思考回路がゆっくりと答えを弾き出す。


「…ヤベェ…遅刻」


 どんなに頑張っても間に合う時間じゃない。かと言ってサボるほど不真面目なつもりはない。次の授業に間に合えばいいのだと結論を出し、のっそりと起き上がった。

日常と非日常の境目