不思議ってたくさんあると思う。
 日常の何気ない中にぽつんっと。

 そう、たとえば…

 普段抱いて寝ているペンギンのヌイグルミが動き出したりとか。

「ペンギンさん。動けるようになったんですねぇ…
 でも、今日は休日だからもうちょっと寝かせてね」

 ぺしぺしと頬を軽く叩かれて、起きたけれど、時計はまだ八時。
 いつもならとっくに起きてなきゃいけないどけ、今日は休日。
 せめて十時までは寝かせてと再び、ペンギンさんを抱きしめて目をつぶる。


 ――――ぺしぺし………

 ――――…ぺしぺし…

 ――――ぺしぺしぺしぺしぺしぺし


「もうぉ…ペンギンさん…そんなにぺしぺししなくたって…
 しょうがないなぁ」

 繰り返し頬をぺしぺしと叩かれて、仕方なく体を起こす。
 まだちょっと眠い。
 眠気を吹き飛ばすために体を伸ばせば、同時に大欠伸も出てしまう。

 呆れた顔をしないでよ、ペンギンさん。

「ぇっと、おはようございます、ペンギンさん」
「……………」

 暫く動かなかったペンギンさんが、小さな頷きを返してくれる。

 しゃべれないのかな?
 さっきから、ぺしぺし叩いているだけだし、たぶん、そうなのかな。

 ベッドから降りれば、ペンギンさんの私を追うように顔を向けてくる。
 大丈夫、置いていかなよ。

「着替えて、カーテン開けたら、ご飯にするから、ちょっと待ってて」

 休みだし着替えなくてもいいんだけど、折角ちょっとだけ早く起きたから、買い物とかに行くのもいいかなって。
 クローゼットから比較的ラフな服を選んで、着替えた。

 カーテンを全開にして、明るい太陽の光が部屋に入ってくる。

 これで、よし。

 ペンギンさんを連れて行こうとベッドに向けば、なにやら後ろを向いたペンギンさん。
 …あれ?
 さっきまでこっち向いていたよね?
 眩しいのかな?

「ペンギンさん。どうしたの?」
「………」

 ぷいっと後ろを向いたままでこちらを振り向かない。
 む。

 ペンギンさんの体を掴んで、正面を向かす。

「こら、人が話しかけているんだから、ちゃんとこっち向こうよ」
「………」

 どこかしら顔の向きが若干それている。

「…ペンギンさん」
「……」

 声をちょっと落として言えば、顔はそのままで、小さなペンギンの手が顔とは逆の方向を差す。
 差されて方向に顔を向ければ、脱ぎ散らかした服。

 …………あ、もしかして

「ペンギンさんって男の子っ!」
「……」

 小さく小さく頷きが返る。
 わぁ…その、ごめんなさい。

「…す、すぐに片付けるからもうちょっと待っててっ!」

 大慌てで脱ぎ散らかしていた服を集めて、洗濯籠へ突っ込んでくる。
 まさかペンギンさんが男の子とは…性別あるんだね。

 う~ん…態々顔を逸らしてくれているってことは、紳士なペンギンさんってことかな。 


『私』とペンギンさんの不思議な生活