一匹は、腹を出し、腹を撫でろと主張する。
一匹は、頭を足になでつけ、かまえと主張する。
一匹は、三つ編みに括り付けてある鈴をめがけて、何度も飛び跳ねる。
一匹は、なんとか肩によじ登ろうと、服に爪をひっかけては、落ちている。
一匹は、飼い主にあたる五虎退の頭の上にいた。
「あ、あの、主さま…」
涙を浮かべる五虎退に笑いかける。
「っくっく、気にするな。
動物に好かれるのは、悪い気はしない」
何度も転げ落ちているやつを拾い上げ、肩に乗せる。
腹を出しているやつと頭を撫でつるやつはいっぺんに、もみくちゃにするように撫でる。
飛び跳ねていたやつも撫でてほしいのか、もみくちゃにされている中に飛び込んでくる。
最後に五虎退の頭の上にいたやつが、俺めがけ、飛びつき、肩に着地する。
「だ、大丈夫ですかぁ!」
「あぁ、問題ない。こいつらは軽いからな」
肩にいる二匹はじゃれ合いが始まり、撫でまわしていた三匹は満足したのか、胡坐をかいている俺の膝の上で互いにじゃれ合い始める。
「五虎退」
「は、はい!主様!」
ずっと半泣き姿の五虎退に声をかけ、俺の隣に座るよう、畳を軽くたたく。
「ぇっと…その…」
「ほら、座れ。
いくら俺でも、座って貰わないと届かなくてな」
おずおずと俺に近づき、ちょこんと俺の隣に座った五虎退の頭を撫でる。
ふわふわした白い髪は手触りがいい。
「あ、あるじさまっ」
「っくっく、こいつらばかり構うのは不平等だからな」